THE鍵KEY: 英国初演
Tête a Tête: オペラフェスティバル 2019年にて好評を博した公演
2019年ロンドン建築フェスティバルにてイベント:“Peering into private lives. Crossing boundaries”
an inspired synergy between words, music, visuals and space
Opera magazine
wonderfully and meticulously crafted piece… presented a unique way of looking at the (opera) art form
Schmopera
日英交流作品
作曲家・演出家 フランチェスカは、THE鍵KEYは日英交流から生まれた作品なので、初めから公演は両国で行うつもりでいた。原作は日本の習慣や美学に深く基づいた作品だが、コミュニケーションの問題、夫婦関係における親密性の問題、性別による固定概念、文化的アイデンティティなど、扱われているテーマは万国に共通するもの。現代オペラフェスティバル「Tête a Tête」におけるTHE鍵KEYロンドン公演では、観客がそうしたテーマを自身の経験と照らし合わせながら熟思し、異文化の背景の中で数々の日本の芸術形式に触れる機会を設けた。日本で生まれた作品をイギリスへ持ち運ぶことは文化を越えた挑戦であった。プロジェクトチーム(演者、創作および制作)とパートナー団体にはイギリスやヨーロッパに拠点を置く個人・団体が参加し、その中には日本文化に初めて携わる方もいた。イギリス公演のキャストは、東京から来た工藤あかね(妻役)と綾香詳三(木村役)にドイツに拠点を置く尼子広志(夫役)、イギリスに拠点を置く望月あかり(娘役)によって編成した。
THE鍵KEY : 再考
新しい環境
ロンドンでの公演は 、THE鍵KEYを全く新しい環境で上演をすることを意味していた。ストーリーの諸相や演出、衣装、儚さなど全てを、内容と場所の間でズレ感なく上演する為に再テストする必要があった。アートやコミュニティーイベントで使用されている東京の古民家から、イギリス人建築家による実際に人が住むモダンな家へ会場を変えたことで、登場人物の展開に大きく影響した。ストーリーは原形を保ちつつ、場所・時代設定を会場に合わせて順応させることで対応。中心となる登場人物は日本からロンドン郊外へ移住してきた現代的な家族という設定に変更した。特に現代の時代設定は登場人物の癖や身振り、衣装を考える上で大きく影響した。その一方で、二ヶ国語から成る台本にはほとんど手を付けず、ストーリーの不朽性を反映させた。
レイアウトによって
どのTHE鍵KEY公演でも同様に言えることだが、演出は住宅のレイアウトによって左右された。ロンドン公演の会場となった10 Tollgate Driveは、温かい家庭のためにデザインされ、オープンプランのスペースは住人が団欒できる空間として設計されている。そうした家で、公然とは接触出来ず、決してお互いに幸せとは言えない家族のストーリーを演出することで、家族として機能不全に陥ってしまう。お互いに直接対話することは殆どないが、独自の窃視による方法を通して効果的にコミュニケーションを取っていく。家族のそれぞれが絶え間なく他人に向けて演技し、自身の秘密を知られたくないふりをしているが、現実は反対で、共有する情報の断片を通してお互いを刺激し合う。各部屋にある反射だけを映した大きな窓は、お互いを覗き見る絶好の機会を作った。
木村の新しい表現
木村の新しい表現の可能性を英国公演の中で模索した。木村には部屋やトリオを用意せず、その代わりに家の中を1人で動き回り、他の登場人物の部屋に決まったタイミングで入るようにした。そうすることで、木村が家族のそれぞれにとって違う存在であることを表現し、全体的な動きのスタイルはどの登場人物の視点から見られているかによって決まるという考えを強調した。
フィードバック
家の中を歩き回りながら物語を追っていくことは新鮮な体験だった。とてもユニークなアイデアだと思う
登場人物それぞれのモチベーションが見られて面白かった。ダンサーによる言葉にしない感情の表現。緊張感、演出、窃視している感覚、素晴らしかった
2019年ロンドン公演: 英国初演
Tête a Tête: オペラフェスティバル 2019年
公演|2019年8月3日14時~/8月3日18時~ 8月4日14時~/8月4日18時~
会場|10 Tollgate Drive、ロンドン、イギリス
主催|「鍵」プロジェクト実行委員会
提携| 国際交基金, Mu Arts, Azuki Foundation とPowell Tuck Associates
助成|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団), Arts Council England, 大和日英基金、RVW Trust
協力| Tête a Tête: The Opera Festival, Southbank Sinfonia, London Festival of Architecture, Whole Hog Theatre
THE鍵KEYは 日英文化季間 2019-20の一環として上演
出演者
夫トリオ
夫(テノール):尼子広志
尺八:Clive Bell
コントラバス:Mark Lipski
妻トリオ
妻(ソプラノ):工藤あかね
チェロ:Idlir Shyti
笙:佐藤尚美
娘トリオ
娘(メゾソプラノ):望月あかり
締太鼓:藤本晃則
バイオリン:Joana Ly
木村(ダンス):綾香詳三
スタッフ
作曲・演出:フランチェスカ・レロイ
ドラマトゥルク:アレクサンドラ・ルター
振付:石本華江
企画制作(英国):柳沢晶子 (Mu arts/Azuki Foundation)
企画制作(日本):山下直弥
制作補助:Fiona Allison、Joanna Pidcock
協力:Asia Grzybowska
会場提供:Angus Shepherdとそのご家族
撮影・写真:Tête a Tête: The Opera Festival
“Peering into private lives. Crossing boundaries”
THE鍵KEYの英国初演に合わせて、Powell Tuck Associatesの協力の下、2019年ロンドン建築フェスティバルにてパネルトーク、抜粋公演が開催された。詳細はこちら
協力
Tête a Tête: The Opera Festival
1997年の開催以来、世界中の多様なスタイルの作品を数多く上演・運営し、21世紀の新しいオペラ発信の場としての地位を確立。2019年度オペラフェスティバル「Tête a Tête」にて THE鍵KEYイギリス初演を上演。
Powell Tuck Associates
ロンドン西部を拠点とする受賞歴のある建築家とデザイナーによる業務を扱う。イギリス初演の会場 10 Tollgate Driveは元々、創設者である建築家 Julian Powell Tuckがデザイン。会場となった10 Tollgate Driveは住人であるAngus Shepherdによって提供された。共同経営者のAsia Grzybowskaはオペラの製作者と協力し「Peering into private lives. Crossing boundaries」イベントを開催。
Mu:Arts
2004年の設立以来、日本の文化プロジェクトのキュレーションとプロデュースをイギリス他世界40ヵ国以上にて展開。伝統と現代の生活、芸術や文化を結びつけ、ジャンルを超えた異文化コラボレーションに取り組むオープンで創造的なプラットフォームを提供することを目指している。
Azuki Foundation
2012年設立。日本とアジアのアートやカルチャーを通して創造力と想像力を刺激するユニークな体験を提供するチャリティー団体。
Southbank Sinfonia
ロンドンを拠点とする室内管弦楽団 Southbank Sinfoniaは毎年、世界中の有望な卒業した音楽家を奨学金を通じて支援。THE鍵KEYのイギリス初演では同窓生の中からヴァイオリニスト、チェリスト、ダブルベーシストの提供があった。
London Festival of Architecture
世界最大の建築フェスティバルは、建築の国際的なハブであるロンドンで毎年開催される。Powell Tuck Associates協力の下行われた“Peering into private lives. Crossing boundaries” イベントは2019年ロンドン建築フェスティバルのハイライトイベントとして催された。
Whole Hog Theatre
受賞歴のある英国シアターカンパニー。2011年の「unstageable」上演以来、脚色や新進気鋭のアーティストとのコラボレーション、リサイクル素材を使用した作品の制作、日英のプロフェクトに特化。2013年にはスタジオジブリの承諾を得て世界初となる「もののけ姫」の舞台化を実現。「トリスタンとイゾルデ」の成功に続き、日英交流を目的としたTHE鍵KEYを制作支援。